「カメラをもう一度」春季特別展 特設ページ vol.8

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Vol.8 ブレない写真を得るための写真家の努力


 #展示コーナー紹介 #写真家を知る #土門拳

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図1.ダンボールアンゴーのコーナー

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図2.アンゴー(イラスト)

 本特別展期間中、館内に「ダンボール模型と実物で知るカメラの歴史」というコーナーを設けています。カメラが小型化していく様子がわかるようにダンボールでサイズ感を復元したコーナーですが、そこでアンゴーというカメラを紹介しています。(図1)

 アンゴーは、1907年にドイツのゲルツ社が販売したカメラです(図2)[全日本2014]。横幅15cm、高15cm、奥行きはレンズを出すと14~17cmになるカメラで、重さは1.2kgあります。手持ちで1kg以上あるカメラを使うことは、現在、そうそうないと思います。ところが、約100年前は、このカメラのシャッタースピードが1/1000秒まで設定可能であったことから(走行中の新幹線が撮影できる)、日本では新聞記者が好んで使ったカメラだとされています[上田1925]。
 実は本展で作品を紹介している土門拳は、このカメラで撮影の練習をしていたそうです。

カメラ保持、ファインダーのぞき、シャッター切りという一連の操作を一組にしたトレーニングを横位置五百回、縦位置五百回、合計千回ずつを毎日晩飯食の食休みにやった。[土門1974]

 1.2kgのカメラを目線まで持ち上げ、ファインダーをのぞく位置で固定し、シャッターを切るという動作を毎日1000回していたというのです。カメラが重ければ重いほど、支える力が必要となり、撮影時にブレてしまうことが多くなります。そうならないために、筋力をつけるとともに、撮影ポジションを体に覚えさせていたのです。
 ちなみに、現在、カメラとして使用しているスマホの重量はiPhone14で172gです。片手で撮影でき、手振れ補正もついています。写真1枚を撮るための労力は極端に減りました。
 土門拳は特別なのかもしれませんが、きちんとした写真を撮るために、なみなみならぬ努力をしていたことがうかがえます。館内に設置のダンボールでできたアンゴーは、重さまでは復元できていませんが、サイズ感は復元しています。土門拳も使っていたカメラの感じを、ぜひその手で確かめてみてください。(文責:工藤 克洋)

《参考文献》
全日本写真連盟『幕末・明治・大正・昭和 カメラの歴史』日本図書センター、平成26年・2014年
上田寅之助『写真銘鑑 附・写真機及写真鏡玉撰択』上田寅之助、大正14年・1925年
土門拳「自叙伝」『死ぬことと生きること』築地書館、1974年
《図版》
図2.浅沼藤吉『写真機械材料目録』浅沼商会、明治40年・1907年 国立国会図書館デジタルコレクションより引用

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投稿日:2024年6月12日