「カメラをもう一度」春季特別展 特設ページ vol.14

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Vol.14 演出写真におけるこどもの素直さ


#植田正治 #写真家を知る #演出写真 #写真史

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図1.ベスト・ポケット・コダック
植田正治が使っていたカメラのひとつ

 ありのままのこどもの姿を撮影した写真が多い本展にあって、趣が少し異なる写真が2点あります。植田正治の「少女四態」と「へのへのもへの」です。木村伊兵衛や土門拳をはじめ「リアリズム」にこだわった作品が高い評価を受けるなかにあって、「演出」や「フォルム」にこだわっていたのが植田でした。
 作品についての評価は、いろいろな方がされているので割愛して、平成10年(1998)に飯沢耕太郎との対談で植田が語っている言葉をちょっと紹介しましょう。

今は、子供たちに声をかけても、なかなか撮らせてもらえない時代になってしまいましたね。昔は、素直にレンズの前に立ってくれたし、「止まれ」って言ったら止まりましたけど、今は駄目ですよ。[植田1998]

 昔に比べてこどもが撮りにくくなっているというコメントですが、この言説に基づき「少女四態」や「へのへのもへの」をみてみると、「そこの子は左を、顔だけ横向きで、きみは右を、上目線で、こっちの子は座って...」や「紙をもう少し下げてじっとしてて」といった植田の指示が聞こえてきそうな気がします。
 植田の優れた演出もさることながら、植田の指示を受け止めたこどもたちの素直さもまた作品を成り立たせている要素のひとつと言えるかもしれません。ちなみに私のこどもは「ニコっとして」と言っても「あっかんべぇ」をします。植田の撮影していた時のようにいかないようです。(文責:工藤 克洋)

《参考文献》
植田正治「身近なものへの愛と演出写真」『日本の写真家 20 植田正治』岩波書店、1998年
《図版》
図1.上田寅之助『写真銘鑑 附・写真機及写真鏡玉撰択』上田寅之助、大正14年(1925)

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投稿日:2024年6月12日