大久保町江井島で鎌倉~室町時代の真蛸壺を焼いた窯跡が発掘されました。

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このたび、宅地造成工事に伴って、明石市が2023( 令和 5) 年 9 月 4 日から 11月 8 日にかけて 発掘調査を行っていた
明石市大久保町江井島 から、13 ~14 世紀の 土師器蛸壺 を焼成した 窯 跡 が発見されました調査地は、埋蔵文化財
包蔵地である 魚住古窯跡 群 の 赤根川支群に含まれており、市立江井島小学校の南西約 200m 、赤根川の北岸堤防
沿いの河岸段丘上に立地 しています。また、当地から約 400 m南西には江井島港が位置しており、ここにはかつて、
行基が開いたとされる 魚住の泊が存在し、中世においては周辺の窯で焼かれた須恵器製品などの流通拠点であったと
考えられています。調査面積は約882 ㎡で す。 東西方向 に の びる 谷筋の中腹で 、鎌倉~室町時代 (13~14世紀の
土師器蛸壺焼成窯が 2 基確認されました。 2 基とも平窯で、窯は底部のみが残存しており、窯壁の上部は失われて
いましたが、桶窯に近い構造をもっていた可能性が考えられます。これまで市内では、古墳時代後期の飯蛸壺を焼成
した土坑は確認されていましたが、 真蛸壺 を焼いた窯は初めての検出例になりました 。また、 全国の調査事例に
おいても、土師器蛸壺 の 焼成窯の 類例はほとんどなく、貴重な事例となりました。さらに、当該地が位置する魚住
古窯跡群の赤根川支群では、13 ~14 世紀頃の 須恵器甕・こね鉢を生産する 窖窯が存在することは知られていました
が、これらとほぼ同じ時期に、土師器の 真蛸壺を専用の窯で生産し ていたことが明らかとな ったことにより、当地域
の窯業生産の 実態が伺える 貴重な資料が得られました 。明石における 真蛸壺の生産は平成 11 年 に終わりを迎えて
いますが、 この 真蛸壺生産の系譜を考える上で、本調査は重要な成果となりました。現地は、 調査後埋め戻され
開発工事 に着手しているため、 すでに見ることはできませんが、今回の調査で出土した蛸壺をはじめとする遺物
などの調査成果を、令和5年12 月 16 日から令和 6 年 2 月 18 日までの期間、当館1F常設展示室にて展示しています
ので、是非ご覧ください 。